●モデルにとって広告とは

広告は商品を売るためのものですが、同時に広告主自身を映し出すものです。どんなコマーシャルを作っているかは、社のイメージそのものになります。

 モデルという立場から考えれば「商品や社のイメージに付随して自分自身も広く知れわたる」と言えます。そしてこれがモデルとしての知名度があがりタレント化してくると立場はあたかも逆転したかのようになります。つまり、誰々が宣伝している△△となります。お店に行って商品名は忘れてしまったけれど「○○が宣伝しているのが欲しい」というのはこの状態です。

 服とモデルの関係で言えば、服のCMは、服が商品であり主役ですが、本来、服の主人は着る人です。こんな人に着てほしい、という理想のモデルになることは、それが宣伝ために着ている服とわかっていても購読者は「○○が着ている△△が欲しい」ということになります。

●芸術写真と広告写真の違い

芸術写真とは、どういう写真か? という定義はひとまず置いておいて、広告とは大衆にアピールするものです。
 写真展などは、肖像写真でも風景写真でも「観たい」という人が観ているのが基本ですが、広告写真は見る側の意思はお構いなしに、自然に、ある意味、暴力的に目に飛び込んでくるものです。ですから最低限、見る人を不愉快にしてはいけないという原則があります。ただし、国によってこのモラルに対する考えかたは違うようです。

●広告のアピールの仕方

広告が大衆にアピールする方法には次のパターンなどがあります。

@憬れ
Aイメージ
Bインパクト 
Cストーリー性
D比較
E差別化
F恐怖広告
Gティーザー広告
Hタイアップ広告

 憧れというのは、「コレ、素敵でしょ」と訴えかけるものです。比較は、アメリカで多く見られるもので数字やデータなどで「どっちが得かよく考えて見よう……」というもの。恐怖広告は「今使っているものを使っているといずれこうなる。これを知らないとこうなってしまいますよ」と訴えるもの。ティーザー広告とは(teaser=teaseする人=からかう人)商品を隠したり小出しにしたりして興味をあおる広告で、たとえば、後から商品名を発表したりするもの。タイアップは、旅行会社と航空会社の関係などです。
 嗜好でいうと男性は、機能性を重視する傾向があります。つまり@Bは女性的広告、DEは男性的広告となります。

●コマーシャルは時代の顔

CMから、流行語やヒットソングが生まれ、多くのモデルがタレントとしてデビューしているのは、その事や人が「時代らしさ」を反映しているからです。
 そもそも何故、モデルとなる「人」が時の象徴になるのかというと、人間の本能に「集団欲」があり、集団には「象徴」が必要だからではないでしょうか。憧れや、嗜好とは別に、世代や主義の象徴としてタレントが使われることもあります。

●何故、広告にモデルが必要か

 広告にモデルをつかう理由は以下の二つがあります。

@見るイメージ
A使っているイメージ
 
@見るイメージ
イメージとは「印象」という意味です。視覚が主体となる広告では言葉よりも一瞬で、すべてがわかるビジュアルで「一目(ひとめ)でいかに感じさせるか」ということが問題になります。
 つまり、洋服でいえば、服そのものをトルソー(胴体だけのマネキン)に着せて写すよりも、モデルに着せれば「こういった雰囲気の場所で、こんな人にこんな風に着こなして欲しい」ということを具体的に伝えられます。

A使っているイメージ
人は常に大きな鏡を持ち歩くわけにはいかないので、自分がそれ(服や物)を「使って(着て・持って)いる」ことを見ることができません。つまり頭の中では、広告の中でそれを着ていたモデルのイメージを自分に重ねています。

●広告にモデルを使う効果

広告にモデルを使う効果は以下の四つがあげられます。
 
@商品に恋をさせる「憬れ」
 「素敵な○○が・カッコイイ○○が・綺麗な○○が・かわいい○○が」使っている何々。「○○がいた、その場所(お店)に行けば、○○みたいな人に会える」「これをもっていたら私も○○みたいに見える」などといった大衆の、「憬れ」に訴えるのがもっとも多いパターンです。
 
 それでは、何故、美しい人がモデルに多く使われるのかというと、人は「美しさを基準に、自分と同じような考えの持ち主だ」と錯覚するものだからです。

A信頼感
 端的に言うとモデルよりも、有名タレントや知識人を利用した広告効果です。勧誘の法則で、相手を説得するときに「〇〇さんも、こう話されていますよ」と相手が知っている第三者の名をあげる方法があります。
 広告もこれと同じに「○○さんが宣伝しているのだから・○○さんが言うのだから、間違いないモノだろう」という信頼感にアピールしています。
 もっと単刀直入に「〇〇様にもかわいがってもらっています」というものあります。
 著名な人物が出ていれば「会社は、この人物を起用したのだから(この製品に)力を入れているな」と感じます。

B共感
 「人」と「もの」という比べ方をすると、モデルを使った広告が、その「もの」だけを写す物撮り(ぶつどり)と違うところは「動きがある」ということです。 
 動きとは「運動の動き」と「心の動き」です。そのものを使うと、あるいはそこにいると、こういう気持になる、といった「感情の共感」がモデルの表情や動きから生まれます。購買者はそれを見て「楽しそそう」と感じたりするわけです。
 
C大きさがわかる
 道具などは、モデルが商品を使っている様子で、使いかたが分かります。たとえば自転車などは人と比較して大きさが分かります。
 
 こうして広告におけるモデルを使う効用を考えるとモデルが実際の広告撮影の仕事で「私自身をもっとアピールしなくちゃ」と考えるのが見当違いだということがわかります。

●ナルシストにならないように

タレントの写真集やグラビアの仕事と、広告の仕事におけるモデルの写真は違ったものです。それは撮り方が違う以前にモデル自身は商品ではないからです。モデルという自家中毒にならないようにしましょう。

●撮影にのぞむ気持ち

どんな撮影の仕事の場合でもモデル自身の気持のあり方は「無垢なもの=イノセントでピュア」な気もちを持つように心がけることが大切だと思います。

 ピュアとは「純粋で澄んでいる」という意味ですが、自分のイメージに対する先入観や、自分のランクに対するプライドなどを仕事場に持ち込まないようにすることです。
 年齢を重ねるごとに表面的な美しさだけではなく、生き方の美しさが自然に出るようにしたいものです。